全国農業新聞 令和3年寄稿記事
私が本格的に農業と向き合ったのは、地元の野菜を集荷して中央市場に出荷していた仕事を営んでいた父親が亡くなった平成7年でした。私の地元ではいわゆる伝統野菜の生産が盛んな地域で、種も自家採取、栽培技術も相伝される農家がほとんどでした。そんな中、父の後を継ぎ集荷業を営みつつ、(宅地化と高齢化によって畑がなくなってくる現状から)将来に対する不安から社会保険労務士資格を取得したのが平成12年でした。
資格は取得したものの、仕事はなく、集荷する生産者によく声をかけたものでした。
「おっちゃん、誰か雇わらへんの?」
「雇ったらいうてや」
それに対する返事がほぼ
「人を雇ったら仕事を作らなあかん。」
「値段がこんな変動するのに、給料払ってられへん。」
でした。
おっしゃるとおり、季節によって作業量の多い少ないが大きく違う、市場価格のふり幅が激しすぎて安定的な売り上げが見込めない状態で人を雇用することなんてできない。これが個人農家さんの本当のところだと思います。でも、そうはいってられない状況が目の前にきています。世間では団塊の世代がすでに定年を向かえておられますが、農業では、まさにこれから団塊の世代が引退をむかえられます。現に今、息子さんと一緒に作業をされているお父さんが引退される時期が近づいています。農作業は、コロナ渦であってもまったなしです。後を継いだ息子さんの農作業を手伝っていたお父さんとお母さんの体力が落ちてくる、そこで雇用ということを考えられるはずです。労働力が落ちても、作業量を減らせない、栽培・生産を止めることができないことも他の産業と大きく違うところです。
20年前は応えられなかった「農業が時季によって作業量がかわること」「売り上げが安定しないから雇用が難しいこと」、実は考え方を少し変えるとなんて事はないのです。
というよりも、他の産業も同じようなことに直面しているのです。農業も大規模化が進んで農業法人も増えていますが、まだまだ家族経営で営まれているところも多くあります。大規模化を目指す方、家族経営でやっていきたい方、雇用することを考え始めた方、に向けて書かせていただいた記事です。
何度かにわけてこのブログにUPしたいと思います。
久しぶりに本屋さん行って、思わず買ってしまいました。
まだ読んでませんが、絶対に農業に役立つと思います。
元は集荷人ですが、市場の動向みているだけで、最近は流通にまったくかかわってないですが、やっぱり農業の課題の根本はここにある(値段のつけ方、つき方)と思っているので、こういうエッセンスも取り入れて農業者に向けて労務の話ができればいいなぁと。
先日、所属している支部会があったのですが、その席で私が皆さんに話をした「ギアをあげる」という言葉がヒットしたようで、50代になりましたが、さらにギアあげて取り組みたいと思います。
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