農業労務のことしか頭にない私ですが、いつも水曜日の夕方は頭が年金に切り替わる準備をし始めます。
ということで、社労士として駆け出しだったころに書いた記事を。
加入記録漏れ問題が噴出してから、年金制度に対する国民の信頼はもはや地に落ちたといっても過言ではありません。
せっかく納めた保険料がキチンと管理されていなかったという現実は、取り返しのつかないほどの信用の失墜につながりました。年金制度への不信感は、年金制度への加入の拒否という形で現れ、どんどん空洞化が進む・・・・・、制度の根幹が揺らぐ・・・・不信が募る・・・・と悪循環をもたらします。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?
年金について書かれたブログを無作為に読んでみると、「入らないほうがいい・・」「いらない・・」といった文言が目立ちます。文章からいって若い方たちのブログかと思います。その方たちは本当に「年金をいらない・・・」と感じているのでしょうか?
「年金払うことは損」という考えをお持ちの方へ参考になればと思い、数字を挙げて書かせていただきます。
まずは、国民年金(=老齢基礎年金)
現在、40年(20歳~60歳)加入で年間79万2100円(平成19年)の額が受給できます。
そして、保険料は14,100円(平成19年度)ですが、法律によって16,900円(平成29年度)まで上がることが決定しています。(保険料額については、物価の上昇や賃金上昇によって変動しますが、ここでは加味しません。)
<負担額>16,900円×12月×40年=8,112,000円
40年間で総額の払い込み額が、811万2千円ということになります。
では、受給できる年金額は、79万2100円(物価や賃金など考慮せず)・・・・10年強で元がとれる計算になります。
老齢基礎年金は、65歳からの受給ですので、75歳まで生きる(・・・変な表現ですが・・・)と大雑把に損はしないことになりませんか?
そして、厚生年金(老齢厚生年金)
厚生年金については、給与額によって様々ですので、単純に比較しにくいのですが、次の設定で計算します。
年間平均給与・・・300万円
在職期間・・・・・・・40年
<負担額>300万円×18.3%=54900円 549000円×40年=21,960,000円
保険料率は、平成29年9月以降18.3%で固定されると法律によって定められています。また、給付乗率についてはもっとも低い(法文化されている)乗率を使います。
300万円÷12=25万円(平均標準報酬額)
250,000円×5.481/1000×480月=657,720円 ・・・・老齢厚生年金
ただし、厚生年金加入者=国民年金第2号被保険者ですでの、プラスして老齢基礎年金も受給できます。
よって、受給総額は657,700円+792,100円=1,449,800円 144万9800円となります。
2196万円の払い込み総額に対して、約145万円の年金額・・・・・・約15年強で元がとれることになります。
老齢厚生年金(+老齢基礎年金)を65歳支給と考えて、80歳まで生きると大雑把に損はしないことになります。
しかし!!!!!!!!
この老齢厚生年金の損得の試算には大きな間違い(厳密には間違いではありませんが・・・)があります。
そうです。厚生年金保険料額については、労使折半なのです。
・・・ということは、個人単位で考えると<負担額> で計算した2196万円の半分の負担で年金額はそのまま・・・ということになります。
つまり、1098万円の払い込み総額に対して、145万円の年金額・・・・・7年強で元がとれることになります。
もっといえば!!!!
30歳で同年齢の配偶者と結婚して、その方が専業主婦(夫)となった場合・・・・、 60歳までの30年間の配偶者の国民年金保険料の支払いは不要になりますので、もっとお得・・・ということになります。
さらに!
障害になった場合や死亡した場合には障害年金や遺族年金などもある・・・という極めてお得な制度・・・・・といえないでしょうか?
ただ、これらの試算はあくまでも現法ということが前提です。法律が改正(改悪)されることもあります。
また、今回の社会保険庁の記録紛失問題のような(私たちにとってみれば)想定もできない事項が起きてしまえば、覆ることもありえます。
私は社会保険庁の回し者でも何でもありません。
ただ、核家族化がすすみ、高齢者が増えている現代こそ「年金」という制度そのものは必要じゃないかと思います。
そして、その支えてである被保険者の方々が保険料を支払うことで成り立っている制度であることに間違いはなく、今回の件で年金離れが進むことが本当に私たちにとってプラスになるのかどうか・・。そのところをしっかりと考えないと見誤ることになるのではないでしょうか。
加入期間が数ヶ月足りなくて年金を受給できない方も多々おられます。
ほんの数ヶ月足りないというだけで1円の年金も受給できないのが今の制度です。
「保険」である以上、保険料を支払う・・・支払わないは自己責任・・・ということになるのでしょうが、報道だけで年金制度に不信に思い「払わない」という結論を出すことだけはやめたほうがいいのでは・・・・と思いますが・・・。
(ここに書いた数字はあくまでも概算です。個々の事例や物価・賃金など情勢によって異なる場合があります。)
うん、熱い記事ですね。(笑)
平成19年度の額をそのまま載せています。今から15年ほど前になりますが、本質的には変わってないと思います。10年短縮となり、余計に受給者にとっては有利になったのではないでしょうか。
*画像は、金時人参の花です。この時期の花ということは、種取りをされている生産者の圃場です。
Comments