全国農業新聞 平成30年4月寄稿記事
経営資源としてよく取り上げられるものに「ヒト」「モノ」「カネ」があります。どれが欠けても経営に支障をきたし、事業活動がうまくまわりません。
中でも、「ヒト」は他の「カネ」や「モノ」とはまったく違ったものです。「カネ」と「モノ」は、形があるものだから、自身の努力や受け継いだ資産で何とかなります。ただ、「ヒト」はそうはいきません。
それは、「ヒト」にはそれぞれ「心」があるから。
自分自身ではない他人が何を望み、何を考えているのか、完全に理解して分身として共に活動できる人はいません。経営資源の中で「ヒト」が一番難しいと言われるゆえんはここにあります。これは農業だけの話ではなく、経営者の想いがうまく伝わらない、作業手順を言葉で説明しても同じようにやってもらえない、そんな経験をされたことはあるはずです。
どうしてわかってもらえないのか、どうして考えてくれないのか、どうして思うように動いてくれないのか・・・、「ヒト」の扱いは非常に難しい。このように他産業においても「ヒト」の問題は非常に大きな課題です。
でも、実は農業においては、他産業よりも深刻な問題なのです。
昔から農「家」といったように、その家系で事業承継が行われることが通常でした。家族は、毎日顔を合わせ、寝食を共にし、収穫期などは家族親戚総出で作業をしていました。もちろん、その苦労や作業手順から、農機具の扱いまで、小さなころから実践してきた経験があります。そういう関係であったからこそ、表情をみただけで様子がわかる。これは、家族だったからです。農家として継承されてきた農業にあって、「ヒト」の問題は無関係でした。経営資源としての「ヒト」は他人ではなかったため、人事・労務問題としてほとんど問題にならなかった。でも、今は違います。
農業センサスによると、農家数は減少の一途をたどり、農業就業者の平均年齢は67歳を超えている。一方、法人経営体については増えています。良し悪しの議論はさておき、農業界の流れとしては、法人化、大規模化に向いていることは確かです。大規模化となると、大きな「カネ」がいり、様々な「モノ」がいる、と同時に、家族経営だけでは成り立たなくななります。
ただ、「ヒト」の扱いは難しい。
それは先にも書いたように、人にはそれぞれ「心」があるから。人は自分の考えで動く。他人からの影響は受けるし、労使の関係であれば言われたことに従いもする。ただ、「心」の中は人それぞれ、だから難しい。
でも、これからの農業には「ヒト」は欠かせない。経営者は、新たに農業を職業として選択する人材をうまく活用して、農業人として育てなければならない。
私の事務所におられる坂本龍馬と(上鳥羽の野菜を売ろうとしていた頃に使っていた妻が書いた)みず菜のPOP
何がどうってことはありませんが、坂本龍馬は大好きです。。(笑)
上鳥羽の生産者が作る野菜で育ってきました。やっぱり最高です。
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