全国農業新聞 平成31年4月26日号付 寄稿記事
Q、今度入ってきた若いもんから「雇用条件通知書をください」と言われた。そんなもの今まで作ったことがなく、「うちは、昔から顔見知りばかりでやってる。1時間900円でこれるときに来てくれたええから。」これではいけないのでしょうか。
そもそもどうして「雇用条件通知書」が必要なのでしょうか。
A、まずは、法律(労働基準法第15条「労働条件の明示」)によって、使用者は労働者に対して、賃金や労働時間などの労働条件の明示を(一定の項目については)書面で行う必要があります。ですので、1時間900円という言葉だけでは、まず労働基準法において、違反しているということになります。ですが、労働条件を明示することは、単に法律に定まっているから必要なことでしょうか。
「これるときに来てくれたら」とおっしゃいましたが、本当にそうですか?
仕事は何時から始めますか?社長が仕事を始める前に始めてもかまわないのですか?
反対に、終業間際なら、仕事がないからと帰すのでしょうか。
1日、1週、1月に何時間働いて、どれだけの収入を得ることができるのか、
どこで、どんな仕事をするのか、
休日や休憩時間はどうなっているのか、
最低限示さなければ働く側が不安でいっぱいです。
労働者は自分の時間を割いて、使用者の事業活動を労働して支えます。つまり、時間を賃金にかえているのです。賃金を得るための条件を提示しないで安心して働くことができるでしょうか。
そればかりではありません。
労働基準法は、最低限度の働くための基準を定めています。つまり、雇う側が条件を提示しないと、労働基準法そのものの基準が働く条件になるということです。皆さんは、労働基準法の中身をどれだけご存知でしょうか。中身のわからない条件で働いてもらう・・・それほど不安なことはありません。労働条件を明示しないということは、そのような状況を労働者に強いているということにもなるのです。
確かに、農業においては自然条件によって不確定のことは多いのは事実です。労働基準法の規定も一部適用除外となっています。ですが、労働者に対して、誠意をもって、説明することで理解が得られるものなのではないでしょうか。わからないから明示しないではなく、不確定の中でも確定できる条件の明示と、なぜ確定できないかの事情を説明する必要はあると思います。
*画像は、先日地元の生産者のもらったさくらんぼ。
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