全国農業新聞 令和2年11月27日寄稿記事
Q.先日、法人化に伴い会社として社会保険に加入しました。正社員が3名おり、そのうちの1名(20代)のものが社会保険に加入することを拒んでいます。
手取りが減るからというのですが、義務だからというとそれならば辞めると言い出しました。どのように説明すればよいでしょう。
A. 社会保険(健康保険及び厚生年金制度)に関しては、保険料が高いために加入したくないと考えられる方も多いのは事実です。まず、大きな理念をもって設立された法人ですから、社会的な責任を果たす意味でも加入すべきことが定まっているのであれば、守らなければなりません。その上で、社会保険の意義を考えましょう。
もし、社員が休日の私生活上で大きな怪我をしてしまい、翌日から数か月間仕事ができなくなったとき、賃金はどうされるでしょうか。おそらく、支払いはされないことでしょう。
当然、業務外の事故が原因ですから支払う義務もありません。ですが、社会保険に加入していたとすれば、傷病手当金という給付を受けることができます。傷病手当金は、業務外における疾病、傷病などにより労務に服することができない期間(最大1年6ヵ月)について、標準報酬月額(の日額相当)の3分の2程度が支給される制度です。
傷病手当金は、市町村が運営主体の国民健康保険制度では任意給付となっており、ほぼ給付しているところはありません。社会保険制度に加入することは、社員の業務外のケガも守ることにもなるのです。傷病手当金がないことで趣味を辞める場合もありえます。
つまり、社会保険は、社員にみえないところでセーフティーネットを広げているのです。また、厚生年金制度も同様です。厚生年金に加入されない場合は、国民年金となるのですが、国民年金はあくまでも基礎となる年金です。この場では給付の内容まで細かく触れませんが、両制度を比べてみれば給付の手厚さがまったく違います。
加入は義務でもありますが、働く者のセーフティーネットという側面もあること、お考え下さい。なお、今般のコロナウイルス感染症の流行により、当該ウイルスが原因の休業に限って傷病手当金を支給される市町村もあります。
逆に、法人に対して法律で加入を義務付けている社会保険制度、国が用意しているセーフティーネットを会社が取り入れないでよいものでしょうか。労働条件は、最低基準があるものの、それを上回る条件を会社は決めることができます。社会保険制度は、法人に責任を課した国のセーフティーネットです。社員個人の判断で、「あなたは入って」「あなたは入らない」ということができるものではありません。
もう小正月も済んでしまっていますが、画像は今年1月1日朝7時ぐらいに氏神様の城南宮に初詣にいった画像です。
皆様、改めまして、本年もどうぞよろしくお願いします。
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