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  • 執筆者の写真將詞 橋本

雇用と手伝い

 

全国農業新聞 平成30年5月2日寄稿記事


 私が社労士になる前、地元の農家を訪れるとその家族の方が一緒に作業をされているところを何度もみたことがある。その農家がいうには「手伝ってもらっている」のだという。そのときは何も考えなかったが、社労士となった今、「手伝い」と「雇用」の違いは何かを考えるようになった。


 「人を雇用する」とは何だろう。違う言葉でいうと「雇用契約(労働契約)を結ぶ」ということになる。当時、聞いた「手伝い」が雇用関係になるのかどうか、今考えると難しい。


 さて、労働基準法にいう労働者とは「職業の種類を問わず,事業または事業に使用される者で,賃金を支払われる者」(同第9条)とされており、雇う側の使用者とは「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(同第10条)とされる。農家は事業を行うものとして当然に使用者になり得るし、当該手伝いに対し、その対価として金銭が支払われているとすれば「使用されている」のかどうかが労働者にあたるかどうかの判断になる。


 そもそも農業においてはこのような関係が常に存在したといえる。その場合、双方が意識的に雇用契約として考えないので、どちらか判断がつきにくい。また、「雇用」することに漠然と不安があったのかもわからないし、手伝っているほうもそれほど大げさに考えていなかったともいえる。ちなみに、「使用されている」の判断については、労働者性を判断する基準として、労働省労働基準法研究会報告が昭和60年12月19日に公表されており、あくまでも実態で判断するもの。


 私がこの寄稿で書かせてもらう「雇用」については、当然のことながら「労働者として雇用すること」を念頭に考えておられる農業経営者に向けて書いている。もし、「手伝い」の方がおられるのであれば、まずはその方が労働者であるかどうか、しっかりと経営者として認識してもらいたい。もちろん、労働者においては、年齢は関係がない。年金を受給されていようがいまいが、雇用契約の関係に変わりない。単に作業力の一助として「手伝い」は非常に重宝するものだと私も思うが、経営規模が拡大していけば、その「手伝い」の方の処遇をどうするかについての問題がでてきている事例を何度も目の当たりにしている。

 例えば、正式に雇用した従業員以上に、悪い意味での「慣れ」が生じ、その者がベテランとなられている場合や、我流の方法を新入社員に指導したり、などである。「手伝い」であるが故に、経営者としても物が言いにくい状況になることはよくあることだ。また、それ以上に問題と考えるのは、業務上災害のリスクである。


 労働者として雇用されていれば、当然のことながら労働基準法上の災害補償の対象となり、法的にも保護される。これが「手伝い」となるとどうか。先の話のとおり、労働者でなければ、補償の対象から外れるのである。当然に、怪我をしたときだけ「労働者」ということがいえるはずもなく、怪我の補償は誰がするのか、という問題になってしまう。

 本紙でもよく取り上げられているが、農作業中の死亡事故は毎年のように400名近くを推移している。これから次代を担う農業者として、非農家からの就農が増えていくし、増やしていかないと今の農業は維持できない。業務上災害をなくすには、まずは経営者の安全に対する意識はもちろん、それ以前に、経営者であるという責任感を持つことが必要である。経営者として自覚がないと当然のことながら、そこに雇用されようとする担い手は集まらない。




 

 5月ですね。。


5月と言えば、えんどう豆のシーズン。


 食育の話になれば、いつも持ち出す「地の豆」の話。農業は、単に食料を供給しているだけでなく、地域と人を結ぶ、大事な役割を果たしてます。


 えんどう豆といえば、豆ごはん・・となりがちですが、我が地元では、地元のキャベツと炊いて食べます。これがまた贅沢な食べ方で。。


 



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